相続した不動産はすぐに売却すべき?メリットと注意点を解説
不動産を相続する手順は、まず遺言書の有無を確認し、指示に従います。次に相続人を特定し、財産目録を作成します。遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成します。不動産の相続登記を行い、名義を相続人に変更します。相続税の申告と納付も期限内に行い、不動産売却時には共有名義の同意と居住状況に応じた税金特例を考慮します。売却は3年以内を目安に進めるのが一般的です。
目次
不動産を相続するまでの流れとは?
不動産を相続するまでの流れは以下の通りです。
◇遺言書の確認
相続が始まる際に重要なのは、遺言書の有無を確認することです。遺言書が見つかれば、その内容に基づいて相続手続きが進められます。既に分割協議があった場合でも、遺言書の指示が優先されるため、再調整が必要になることもあります。不動産を含む遺産の相続において、遺言書は第一歩となります。
◇相続人の確定
相続が始まったら、遺言書の有無の確認と同時に、迅速に相続人を特定することが重要です。戸籍謄本を調べることで、被相続人の家族や親族関係を詳しく明らかにし、正確な相続人を特定します。
後から新たな相続人が現れる場合、遺産分割をやり直す必要があります。相続手続きをスムーズに進めるためには、初めに相続人を確定させることが不可欠です。
◇財産目録を作成
相続時には、相続人の確定と並行して被相続人の財産を特定し、財産目録を作成することが不可欠です。固定資産税の課税明細書や名寄帳から不動産情報を収集し、全財産を網羅した目録を作成します。この目録は相続手続きの基礎となり、円滑な協議のための重要な資料として活用されます。
◇遺産分割協議
相続時に遺言書がない場合、相続人全員が集まり遺産分割協議を行います。財産の分配方法について話し合い、全員が合意すれば遺産分割協議書として文書化します。この協議書は不動産を含む相続財産の具体的な分割方法を明確にし、相続手続きを円滑に進めるための重要な役割を果たします。
◇相続財産の名義変更
不動産の相続には相続登記が必要で、これにより被相続人から相続人への名義変更が正式に行われます。登記事項証明書などの必要書類を整え、法務局に申請します。この手続きにより不動産の所有権が相続人に移転し、相続手続きが完了します。相続登記は相続人の法的権利を確立する重要な過程です。
相続発生後、相続税の申告と納付が必要です。申告期限は相続開始から10ヵ月以内で、期限を守らないと特例が適用されない可能性があります。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が発生するため、注意が必要です。
不動産を相続したら、相続登記を忘れずに
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不動産を相続する際には、相続登記が不可欠です。これは、亡くなった所有者から新しい所有者へ名義を変更する手続きであり、相続人が正式に不動産の所有者として法的に認められることを意味します。
相続登記の手続きや必要な書類は、相続の方法によって異なります。例えば、遺言書がある場合にはその内容に基づき登記が行われます。遺産分割協議による相続では、相続人全員が合意した遺産分割に基づいて登記が進められます。一方、遺言書がない場合や協議が成立しない場合は、法律に従った法定相続分に基づいて登記が行われます。
2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続後3年以内に登記を申請しないと最大で10万円以下の罰金が科されます。この義務化により、相続登記を適切に行うことが一層重要視されています。
相続した不動産を売却するメリットとは?
相続した不動産を売却する場合、譲渡所得税が課されますが、特例を活用することで税負担を軽減できます。
取得費加算の特例
相続から3年10カ月以内に売却する相続財産に対し、相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を減額できます。
マイホームを売ったときの特例
居住用財産を売却した場合、最大3,000万円までの特別控除が適用されます。例えば、相続した家を売却し転居する場合に有効で、譲渡所得税の軽減に寄与します。この特例は「取得費加算の特例」と併用可能です。
被相続人の居住用財産を売却する場合の特例
相続後の居住用不動産を売却した際に適用されます。これにより、一人当たり最大3,000万円までの控除が可能で、譲渡所得税を軽減しますが、「取得費加算の特例」とは併用できません。
相続した不動産を売却する際の注意点とは?
相続した不動産を売却する際は、以下の点に注意しましょう。
◇共有名義の売却は全員の同意が必要
相続した共有名義の不動産を売却する際には、全ての共有者の同意が不可欠です。まず、不動産売却自体に関する同意が必要であり、各共有者が売却に同意する意思を示さなければなりません。
さらに、売却価格についても共有者全員で合意する必要があります。特に、最低売却価格を決めておくことが重要で、これにより価格交渉が円滑に進みます。査定結果の最低価格を基準に設定することが一般的です。
◇相続した家に住む場合と住まない場合では税金特例が異なる
相続した親の家を売却する際、相続人がその家に居住するかどうかによって税金特例が異なります。居住する場合、最大で3,000万円まで非課税の「3,000万円特別控除」や、居住用財産の買換え特例が適用されます。これにより、売却益に対する譲渡所得税が軽減されます。
一方、居住しない場合は、「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」が主な選択肢です。
◇売却期限は3年以内が目安
相続した不動産の売却には、売却期限として3年以内を目安とする必要があります。この期限は、相続税に関連する特例である取得費加算の特例と相続空き家の3,000万円特別控除の適用期限に関わっています。
取得費加算の特例では、相続開始後3年以内に売却が必要であり、相続空き家特別控除も同様に3年以内に売却する必要があります。この期限は、不動産の名義変更や売却の準備期間を考慮して設定されています。早めの売却計画を立てることで、特例の適用を逃さずに済むようにすることが重要です。
不動産を相続する手順は、まず遺言書の有無を確認し、遺言書があればその指示に従います。次に相続人を特定し、財産目録を作成して相続財産を明確にします。遺言書がない場合は相続人全員が集まり遺産分割協議を行い、協議書を作成します。不動産の相続登記も重要で、これにより名義が相続人に変わります。相続税の申告と納付も期限内に行う必要があります。
相続後の不動産売却では、共有名義の売却には全員の同意が必要であり、居住するかどうかによって税金特例が異なります。売却期限は3年以内を目安にすることが推奨されます。