住み替え時の不動産売却手順と資金計画のポイント

ライフステージや家族構成の変化などを背景に、新しい住まいを購入しながら今の住まいを売却するのが住み替えローンです。
子どもの成長による部屋不足や親との同居、職場の異動など、多彩な理由で住み替えを検討するケースは増加傾向にあります。しかし、現在の物件をどのように売却するかだけでなく、ローン残債や資金計画との兼ね合いなど、考慮すべき点が多いのも事実です。
本記事では、住み替え時の不動産売却手順と資金計画をわかりやすく整理し、売却先行か購入先行かという進め方のメリット・デメリット、さらにブリッジローンの活用術なども掘り下げます。
最後には、成功に欠かせない準備の重要性を再確認し、計画的な進行のために押さえておくべきポイントをまとめました。
大きな金額が動くからこそ、一歩手順を誤るとリスクも高いものの、正しい情報をもとに行動すれば理想的な住まいへの移行を実現できます。ぜひ本記事を活用し、スムーズな住み替えに向けた第一歩を踏み出してください。
目次
住み替え売却の基本プロセス

住み替えで不動産を売却するとき、考慮すべきポイントは大きく2つあります。ひとつは、「売却先行か、購入先行か」というスケジュール上の選択です。
もうひとつは、「ローン残債をどのように処理するか」という金融上の選択となります。これらを正しく組み合わせないと、思いがけないリスクやトラブルに巻き込まれる可能性が高まってしまいます。
たとえば、いまの家が売却できる前に新居を購入すると、二重ローンのリスクが発生しますし、先に売却を終えてから新居を探す場合は、仮住まいによる空白期間が生じるかもしれません。
また、いまの家に残ローンが多く残っている状況で住み替えを検討するなら、抵当権抹消や住み替えローンの仕組みを理解しないまま手続きを進めると、売却段階で手詰まりを起こすケースがある点にも留意する必要があります。
本セクションでは、住み替え売却の基本的な流れを踏まえながら、スケジュール選択(売却先行・購入先行)とローン残債対応における要点を詳しく解説します。
どちらの方法が自分に合っているかは、家族構成や資金状況、引っ越しに割ける時間などによって異なりますので、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで最適な道を選びましょう。
売却先行・購入先行の選択

ローン残債対応
住み替えを進める際、まず検討するのが「売却先行で進めるか、購入先行で進めるか」という点です。これはスケジュール上の大きな違いを生み出す部分であり、リスクやメリットも大きく変わります。
また、いずれのパターンでもローン残債をどのように処理するかが問題となるため、最初に自分の状況を総合的に把握しなければなりません。
ここでは、売却先行と購入先行、それぞれの特徴とローン残債への対応策について詳しく見ていきます。
売却先行とは

売却先行とは、いま住んでいる家を先に売却してから、新居の購入に進む方法です。この最大のメリットは、売却金額が確定してから次の物件を探せることにあります。
売却金額が実際にわかっているので、新居の予算が立てやすいほか、もしローン残債を売却代金で完済できるのであれば、抵当権抹消もスムーズに行うことが可能です。
つまり、資金計画をはっきりさせやすいのが特徴といえます。
しかし、売却先行では、物件の引き渡し期限が早めに設定されると、仮住まいが必要になることがデメリットです。たとえば、予定より早く買主が決まり、「○月末までに物件を明け渡してほしい」と求められれば、それまでに新居を確保できない場合、一度退去して賃貸などで仮住まいをする選択を迫られるかもしれません。
引っ越し回数も増え、費用や手間がかさむ点は売却先行の大きな課題です。
もちろん、売却のタイミングと新居購入のタイミングがうまく合えば、仮住まいを回避できるケースもありますが、これは市場状況や物件の魅力によって左右されやすいのが現実です。
購入先行とは

一方で、購入先行は、先に新居を購入しておき、その後にいまの家を売却するスタイルです。最大のメリットは、仮住まいの必要が基本的にないこと。
新居を確保したらすぐに引っ越しできるため、住環境の変更が一度で済み、引っ越し回数やストレスが少なくて済みます。
また、理想の物件を見つけたときに即座に行動できるので、人気エリアや希少物件を買い逃しにくいのも購入先行の強みといえます。
しかし、購入先行で避けられないリスクが、二重ローンです。まだいまの家のローンを完済できていない状態で、新居のローンを新たに組むとなると、収入や返済比率によっては金融機関の審査がより厳しくなる可能性があります。
加えて、もし売却が思うように進まず、長期間いまの家が売れなかった場合には、二つのローンを同時に返済し続けるという大きな負担を抱えかねません。
こうした状況を回避するためには、いまの家が売れなくても対応できる資金余力や、融資審査に十分耐えうる収入を確保しておくことが重要です。
ローン残債対応

売却先行・購入先行のいずれを選ぶとしても、いま住んでいる家にローン残債がある場合は、抵当権抹消などの手続きを踏まなければなりません。
具体的には、「売却額 > 残債」の場合は売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消して決済する流れが一般的です。
一方、「売却額 < 残債」のケースでは、住み替えローンやつなぎ融資(ブリッジローン)などの金融商品を活用して不足分を補う方法が考えられます。
•住み替えローン

これは、旧居のローン残債と新居の購入資金を一本化して貸し出してもらう仕組みです。返済総額や金利が一般的な住宅ローンより高くなる傾向があり、担保評価や返済能力の審査が厳しいのが特徴です。
しかし、旧居と新居のローンを同時に抱えるリスクをある程度解消できるため、残債を上回る売却ができそうにないときの選択肢として利用されるケースがあります。
•ブリッジローン(つなぎ融資)

短期間だけ資金を立て替える方法で、売却が完了して手元にお金が入った段階で一括返済します。
購入先行・売却先行に関わらず、一時的なキャッシュフローを確保したいときに有効ですが、金利負担や手数料が高めに設定されることが多いので、費用対効果をよく検討する必要があります。
ローン残債対応は住み替えにおける最も重要なテーマのひとつであり、ここを誤ると資金難や想定外の返済負担が生じる危険があります。
たとえば、残債が多い状態で購入先行を選ぶと、短期間で旧居を売却できなかった場合に二重ローンが重くのしかかることも珍しくありません。
逆に、売却先行でも予想より売却価格が下回ったり、買主が見つからず長期化したりすると、仮住まい費用が予想以上にかさむ可能性があります。
基本的な流れを押さえて選択を

ここまで述べたように、住み替えでは「売却先行 or 購入先行」というスケジュール選択と「ローン残債対応」という金融選択が絡み合い、それぞれにメリット・デメリットがあります。以下は、住み替え売却の大まかな流れをまとめた例です。
1.現在の資金状況やローン残高を把握
•住宅ローン残高証明書や預貯金残高を確認する。
2.売却価格の査定
•不動産会社に査定を依頼し、いまの家がどの程度で売却できそうかを見極める。
3.購入予定の新居を検討
•立地条件や予算、ローン審査の可否を踏まえ、どの程度の物件が買えるかを確認。
4.売却先行か購入先行かを決定
•家族構成や引っ越し時期、資金的な余裕を考えつつ、どちらの方法が自分に向いているかを検討。
5.ローン残債対応策を決定
•売却だけでローンが完済できるか、あるいは住み替えローンやブリッジローンが必要かを判断。
6.売却・購入の具体的なステップへ移行
•売却活動開始(媒介契約〜買主との交渉〜売買契約〜決済)
•同時または前後して購入活動(物件探し〜仮審査〜売買契約〜融資実行)
スケジュール管理と資金計画が一体となっていないと、どこかの段階で資金ショートが起きたり、引っ越し期間が合わずに大きなストレスや費用負担がかかったりする可能性があります。したがって、住み替えを考え始めたら、まずは自分の家がどのくらいで売れそうかをリサーチし、新居の購入費や引っ越し費用と合わせて検討するのがおすすめです。
ベストな進め方は状況次第

住み替え売却を成功させるためには、売却先行か購入先行のいずれを選択しても、ローン残債の処理を含めてリスクを最小限に抑える必要があります。
売却先行なら仮住まいのコストやスケジュール管理が、購入先行なら二重ローンのリスクがそれぞれ大きくなるため、どちらに重きを置くかは家族のライフスタイルや資金余力によって変わるでしょう。
また、抵当権抹消や住み替えローン、ブリッジローンといった金融商品をうまく活用すれば、一時的なキャッシュフロー不足や残債オーバーの問題をクリアできるかもしれません。
ただし、それぞれに金利や手数料、審査要件などがあり、安易に利用すると費用がかさんでしまうことも十分考えられます。
結局のところ、最適な進め方は人それぞれです。家族構成、収入水準、現在の家のローン残高、新居への希望条件などを総合的に判断して決める必要があります。
一度失敗すると金銭的負担が大きくなるため、焦って行動するのではなく、不動産会社や金融機関としっかり相談し、自分に合った戦略を練ることが肝心です。
住み替えによる新生活のスタートを成功させるために、ぜひ本項目を参考に検討を進めてください。
◯あわせて読みたい記事
住宅ローンが残っていても住み替えは可能?成功のためのポイント
資金計画の組み立て方

住み替えを成功させるためには、資金計画が極めて重要です。特に多くの方が新居購入に住宅ローンを組む現実を考えると、売却価格と新居の購入額のバランスを誤ると、ローンの負担が想定を超えてしまう可能性が高まります。
最悪の場合、返済比率が大きくなり家計を圧迫するだけでなく、残債処理や引っ越し費用なども重なり、住み替えどころではなくなるケースもあります。
そこで本セクションでは、売却予想価格の設定方法やブリッジローンの活用術など、資金計画を組み立てるうえで押さえておきたいポイントをわかりやすく解説していきます。
売却予想価格の設定

売却予想価格とは、現在の住まいがいくらで売れるかを見込んだ金額のことで、新居購入の予算を決めるうえで最も重要な指標となります。
もし予想が甘すぎると、実際の売却価格が予想を下回った場合に大幅なローン残債が残って計画が狂ってしまう一方、厳しすぎると、本来よりも高値で売れたはずの物件を安値で手放さざるを得なくなる可能性があります。
不動産会社に査定を依頼

売却予想価格を設定する最善の方法は、複数の不動産会社に査定を依頼することです。各社は、物件の立地・築年数・間取り・周辺相場などを考慮して、どの程度の価格で売却できそうかを提示してくれます。
一社だけの査定だと数字が偏るリスクがあるため、複数の意見を聞くことで相場感をしっかり掴むのがおすすめです。
査定には大きく分けて机上査定と訪問査定の2種類があります。机上査定は書類やデータをもとに行う簡易的な見積もりで、短期間で結果が得られます。
一方、訪問査定は実際に物件を見てもらうため、建物の状態や室内の設備などを含めて詳細に評価が行われ、より精度の高い査定額が提示される傾向にあります。
正確な売却予想価格を知りたい場合は、できるだけ訪問査定を利用するのが望ましいでしょう。
適切な売却価格を設定するメリット

査定結果を踏まえて売却予想価格を導き、その情報をもとに実際の売り出し価格を設定します。この売り出し価格が、売却活動の成果を左右する極めて大きなポイントです。
あまりに高すぎれば買い手がつかない可能性が高まり、売り出し期間が伸びて仮住まいや新居の購入が遅れることも。逆に安すぎれば、売主が本来得られるはずだった利益を損なうリスクがあります。
住み替えの場合は売却価格が新居購入費用に直接かかわりますし、ローン残債を完済できるかどうかも左右します。
もし売却価格の見込みが外れれば、その後の資金計画全体が揺らぎかねません。したがって、複数の不動産会社の査定や周辺相場のリサーチをもとに、慎重かつ現実的な売却価格を設定することが重要です。
不動産会社と相談しながら最適な価格を定めることで、販売開始から適切なタイミングで買主を見つけやすくなります。結果として、スムーズな売却と確実な資金確保が叶い、住み替えの成功に大きく近づくことになるでしょう。
ブリッジローン利用方法

住み替えを進めるうえで、購入先行・売却先行いずれの場合でも、一時的に資金が不足するリスクを抱えることがあります。
たとえば、旧居の売却資金が手元に入る前に新居の支払いを行う必要がある場合、ブリッジローン(つなぎ融資)が有効な手段となるでしょう。
ブリッジローンとは
ブリッジローン(つなぎ融資)は、旧居の売却代金が手元に入るまでの短期間だけ資金を借りる仕組みです。
たとえば、旧居を2,500万円で売却できる見込みがあるにもかかわらず、新居の購入契約が先に迫っている場合、一時的に資金が足りなければブリッジローンで立て替えてもらい、旧居が売却できた段階で一括返済するのが一般的な流れです。
これにより、買い逃しを防ぐことができ、特に人気エリアや希少性の高い物件を購入したいときには大きなメリットがあります。売却先行のケースでも、売却が思うように進まず決済時期が遅れ、一時的に資金が足りないシチュエーションで役立ちます。
金利や手数料に注意

ブリッジローンは短期間の融資という性質上、金利がやや高めに設定されることが多いです。
さらに、金融機関によっては事務手数料や保証料なども上乗せされるため、利用する際にはトータルコストをよく把握しておくことが重要です。
これらの費用が、住み替え全体のコストを押し上げる可能性があるため、本当に必要なときだけ利用するのが望ましいといえます。
また、旧居の売却が長引いてしまうと、ブリッジローンの返済期間も伸びてしまい、金利負担がさらに大きくなるリスクがあります。
売却期間をどの程度と見込むか、売却価格がどれぐらい確実に見込めるかなどを、不動産会社との打ち合わせや市場調査を通じて、できるだけ精度高く計画を立てましょう。
メリットとデメリット
ブリッジローンを活用することによるメリットとしては、次の点が挙げられます。
•買い逃しを防げる
新居を先に確保することで、希望の物件を逃すリスクを軽減できる。
•資金不足をカバー
旧居の売却代金を待つことなく新居購入を進められるため、スムーズな住み替えが可能になる。
一方で、デメリットとしては、
•利息や手数料の負担

金利が高めに設定されるほか、短期借入であっても費用がかかる。
•売却期間の長期化リスク
旧居が予想通りに売れない場合、二重借入に近い状態が続き、費用負担が増す。
ブリッジローンの利用可否や条件は、金融機関や個々の信用力によって異なるため、事前にしっかりと相談し、複数の選択肢を比較検討することが肝心です。
もし資金繰りに余裕があるなら、ブリッジローンを使わずに済むよう売却先行を選択するという方法もありますし、住み替えローンによる一本化を検討するのも手段の一つです。
計画性と柔軟性がポイント

住み替えにおける資金計画を組み立てるうえで、売却予想価格の正確な把握と、状況に応じたブリッジローンなどの金融商品の活用が大きなカギを握ります。
たとえば、査定を十分に行わずに売り出し価格を高く設定しすぎると、売りに出してからなかなか買い手がつかず、ブリッジローンの利息負担が増えるリスクがあるでしょう。
逆に、あまりにも安く設定すると、本来より低い価格で契約が成立してしまい、新居購入費やローン残債処理が厳しくなる可能性があります。
大切なのは、自分の家の資産価値を客観的に把握し、市場動向や売り出し期間を見据えたうえで、現実的な売却価格を設定することです。そのうえで、新居購入のタイミングやローンの組み方を慎重に検討し、必要に応じてブリッジローンを利用するなど、最適な手段を選択しましょう。
また、住宅ローン控除や諸費用控除などの減税措置が受けられるかどうかも含めて、不動産会社やファイナンシャルプランナーと相談すると、より具体的で確度の高い計画が立てられます。
慎重な価格設定と柔軟な資金繰り

住み替えにおいては、売却価格を甘く見積もりすぎて残債処理に苦しんだり、買い替えタイミングを間違えて二重ローンの負担に悩んだりする事例が少なくありません。
そうした失敗を避けるためにも、複数の不動産会社に査定を依頼して売却予想価格を正確に掴み、ローン残高やブリッジローン利用による金銭的な影響をトータルで計算したうえで、無理のない計画を立てることが肝要です。
また、住み替えはライフステージの変化や将来設計に深く関わる大きな決断です。単に価格やローンだけでなく、転居後の生活環境や家族構成も総合的に考慮し、収支バランスが崩れないように細心の注意を払いましょう。
ときには専門家のアドバイスを受けることで、複雑な手続きをスムーズに進めることができます。しっかりとした資金計画があれば、住み替えの不安を軽減し、新生活のスタートをより安心して迎えることができるはずです。
◯あわせて読みたい記事
不動産売却ではどんな費用がかかる?利用できる控除の種類や注意点を紹介
まとめ

住み替えは、現在の家を売却して新居を購入する大きなライフイベントです。スケジュール上は「売却先行」と「購入先行」という2パターンがあり、どちらを選んでも空白期間や二重ローンなどのリスクとメリットが存在します。
たとえば、売却先行なら資金計画を立てやすい一方で、仮住まいが必要になるかもしれません。購入先行の場合は理想の物件を早期に確保できますが、二重ローンのリスクが高まるため、返済比率や金融機関の審査に注意が必要です。
また、ローン残債がある場合は抵当権抹消の手続きや住み替えローンなどを検討しなければなりません。売却予定価格が残債を下回るケースでは、不足分をどう補うかが大きな課題です。
こうした状況では、短期間の資金不足を補うブリッジローン(つなぎ融資)の活用も選択肢となりますが、金利負担や返済計画を十分に考慮しないと予想外の出費が生じることもあります。
住み替えをスムーズに進めるポイントは、まずいまの家の売却予想価格を正確に把握することです。複数の不動産会社に査定を依頼し、市場相場を把握したうえで売却価格を設定すると、新居購入費用の算出やローン残債処理が容易になります。
さらに、銀行や不動産会社、ファイナンシャルプランナーといった専門家とも連携しながら、ローン審査や手続きの流れをしっかり確認しておくことが大切です。
計画的な住み替えに成功すれば、家族のライフステージや将来像に合った理想の住まいへと移行し、新生活を円滑にスタートさせることができます。本記事の内容を参考に、資金計画・スケジュール管理・専門家への相談などを総合的に行い、安心で納得のいく住み替えを実現してください。
◯あわせて読みたい記事