不動産の共同名義とは?よくあるトラブルと不動産売却のポイント
不動産の共同名義は複数の人が同じ不動産を所有する形態で、所有権は各人が持分を持つため、意思決定には全員の同意が必要です。共同名義となる主なケースは、夫婦や親子で住宅購入する場合や相続時です。
共同名義の不動産売却では、全共有者の同意が必要で、税金の負担割合で争いが起きることもあります。また、相続時には権利関係が複雑になり、意思決定が難しくなることがあります。トラブルを回避するためには、遺産分割で換価分割を選択したり、早めに売却したりすることが重要です。
目次
共同名義の意味と共同名義になる主なケース
不動産の共同名義は、複数の人が同じ不動産を所有する形態です。この場合、所有権は各人が持分を有する形となり、意思決定を行う際には、すべての共有者の同意が必要となります。共同名義と類似の意味で使われる「共有名義」にも触れ、どのようなケースで不動産が共同名義となるのか、またそのメリットとデメリットについて解説します。
◇不動産の共同名義とは?単独名義との違い
共同名義は、単独名義とは異なり、複数の名義人が同じ不動産を所有する形態です。具体的には、夫婦や親子、兄弟姉妹などが共同で不動産を所有することが一般的です。単独名義の場合、全ての意思決定を一人で行えますが、共同名義の場合は、全員の同意が必要です。これにより、売却や改修、貸出などの手続きにおいて調整が求められます。
なお、共同名義と「共有名義」はほぼ同じ意味で使用され、両者とも複数の人が所有権を共有する状態を指しますが、使われる文脈によって若干の違いが生じることもあります。
◇不動産が共同名義になる主なケース
不動産が共同名義になる主なケースとしては、夫婦が住宅を購入する場合や、相続によって遺産を共有する場合が挙げられます。例えば、大田区や品川区のような都心近くで不動産を共同名義で購入する場合、価格が高いため、資金負担を分担するために夫婦や親子で共同名義にすることがあります。このような場合、共同でローンを返済するため、名義を共有する形になります。
また、相続時には不動産が遺産として残されると、相続人全員が共有名義でその不動産を所有することになります。遺産分割が完了するまで、共有状態が続くことが多く、その後に不動産の売却や分割が行われます。
共同名義の不動産売却で起こり得るトラブル
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共同名義の不動産を売却する際には、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。共同名義の場合、複数の共有者が関与するため、意思の疎通がうまくいかないと売却が進まなかったり、税金の負担で争いが起きたりすることもあります。共同名義の不動産売却時に起こりうる主なトラブルについて説明します。
◇売却したくても売却できない
共同名義の不動産を売却したい場合、共有者全員の同意が必要です。もし、共有者間で意見が食い違った場合、売却を進められません。たとえ一部の共有者が売却に賛成していても、他の共有者が反対している場合、法律的に売却できません。したがって、事前に共有者間で合意を得ることが重要です。
◇税金の負担割合でトラブルが発生する
共同名義の不動産を売却する際には、売却によって得られた利益に対して課税されます。税金の負担割合については、各共有者の持分に応じて分担されることが一般的ですが、この負担割合について意見が分かれることがあります。税金を負担する割合を決定する際に争いが起きることがあるため、事前に税務署などで確認し、税金の支払い方法について取り決めておくことが重要です。
◇相続時に権利関係が複雑になる
共同名義の不動産は、相続時に新たな共有者が加わることで権利関係が複雑になります。例えば、親が亡くなり、子供たちが相続人となると、親が所有していた不動産は子供たちの共有名義になります。その後、他の相続人が不動産を売却したいと考えた場合、すでに複雑になった権利関係を整理するのが困難になります。このように、相続によって共有者の数が増えると、意思決定が難しくなるため、早期に手続きを進めることが必要です。
◇共有物分割請求訴訟を起こされる可能性がある
共同名義の不動産を売却できず、共有者間で意見が一致しない場合、共有物分割請求訴訟が起こされることがあります。この訴訟は、共有者のうち一部が不動産の分割を求めて訴えを起こすもので、法的手続きを通じて解決を図るものです。このような訴訟を避けるためにも、早期に共有者間で話し合い、合意を得ることが重要です。
共同名義の不動産を売却する方法
共同名義の不動産を売却する方法は、共有者全員が一緒に売却する方法や、自分の持分のみを売却する方法など、複数の選択肢があります。この章では、共同名義の不動産を売却する際の方法について詳しく解説します。
◇共有者全員で不動産全体を売却
最も一般的な方法は、共有者全員が同意して不動産全体を売却することです。この場合、共有者全員が売却契約を結び、スムーズに不動産を売却できます。ただし、全員の同意が必要なため、共有者間で意見が一致しない場合、売却が進まないことがあります。そのため、事前にすべての共有者の同意を得ることが重要です。
◇自分の持分のみ売却
自分の持分だけを売却する方法もありますが、この場合、持分だけを購入することになるため、購入者はその後の使用や管理について共有者と調整する必要があります。また、将来的にその持分が再度売却される際には、再度共有者間で調整が必要になることが考えられます。そのため、持分の売却については慎重に判断することが求められます。
◇他の共有者に持分の買取りを依頼する
他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法も選択肢の一つです。この場合、価格交渉を行い、合意が得られれば持分を買取ってもらうことが可能です。ただし、他の共有者が買取りに同意しない場合、この方法は実現できません。事前に他の共有者と話し合いを行い、合意形成を図ることが重要です。
◇分筆してから売却する
分筆とは、不動産を物理的に複数の部分に分けて売却する方法です。この方法は、大きな土地を分けて売却する際に適用されます。分筆後、それぞれの部分を売却できるため、売却を希望する部分のみを売却できます。分筆を実施するには、専門的な手続きが必要となるため、事前に専門家に相談することが求められます。
共同名義の不動産をめぐるトラブルを回避する方法
共同名義の不動産に関するトラブルを回避するためには、いくつかの対策を講じておくことが重要です。ここでは、トラブルを未然に防ぐための具体的な方法を解説します。
◇遺産分割は換価分割を選択する
遺産分割の方法には、換価分割という方法があります。換価分割は、不動産を売却し、その売却金を相続人で分割する方法です。この方法を選択することで、実物の不動産を共有することなく、現金として分けることができ、後々のトラブルを防げます。相続時に複雑な手続きを避けるためにも、換価分割を選択することが有効です。
◇共同名義の不動産は早めに売却する
共同名義の不動産は、早めに売却することで、権利関係が複雑になる前に処理できます。特に相続などで共有名義になった場合、時間が経つと権利関係が複雑になりやすいため、問題が大きくなる前に売却することが重要です。
◇共有不動産の問題に強い弁護士に相談する
共同名義の不動産に関する問題が生じた場合、法的に対処するためには弁護士の助けが必要です。共有不動産に精通した弁護士に相談することで、問題を円滑に解決することができます。弁護士は、共有者間の合意形成をサポートしたり、法的手続きを進められたりするため、トラブルを未然に防ぐために非常に有効です。
不動産の共同名義は、複数の人が同じ不動産を所有する形態のことです。所有権は各人の持分に基づき、意思決定には全員の同意が求められます。代表的なケースとしては、夫婦や親子が住宅を共同購入したり、相続によって不動産を共有したりする場合があります。
共同名義の不動産では、売却や改修などの決定に全共有者の同意が必要で、意見が食い違うとトラブルが生じることがあります。共同名義の不動産売却時には、全共有者の同意が得られないことが理由で、売却が進まないことも少なくありません。
税金の負担割合で争いが起こることもよくあります。相続時には、共有者が増え、権利関係が複雑になるため、意思決定が難しくなることがあります。このような問題を回避するためには、遺産分割時に換価分割を選ぶ、または早期に売却することが有効です。
共同名義の不動産を売却する方法には、共有者全員で不動産全体を売却する方法、持分だけを売却する方法、他の共有者に持分を買い取ってもらう方法、分筆してから売却する方法などがあります。特に売却の際は、共有者間の合意を得ることが重要です。
トラブルを回避するためには、遺産分割時に換価分割を選ぶ、共有名義の不動産を早めに売却する、または専門家に相談することが推奨されます。特に、共同名義に関する問題が生じた場合、共有不動産に詳しい弁護士に相談することで、円滑にトラブルの解決を図れます。