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不動産売却の手引き

譲渡所得とは? 譲渡所得税を支払わない場合のリスクと申告方法

公開:2024.10.21 更新:2024.10.21
譲渡所得とは? 譲渡所得税を支払わない場合のリスクと申告方法
引用元:フォトAC

譲渡所得とは、土地や建物などの不動産を売却して得た利益のことを指します。不動産を売却した場合、利益に応じて譲渡所得税が課されますが、適切に申告しないとペナルティが発生するかもしれません。

申告を怠ると「無申告者」として扱われ、控除が受けられなくなるだけでなく、最終的には罰金や刑罰の対象となるリスクがあります。譲渡所得税の支払いを避けるためには、正確な手続きを踏むことが重要です。

不動産売却に関わる譲渡所得!概要は?

不動産を売却するなら知っておきたいのが、譲渡所得とその周辺知識です。まず手始めに、譲渡所得の定義、譲渡所得にかかる税金について見てみましょう。

◇譲渡所得とは

譲渡所得とは、土地や建物などの不動産、株式、漁業権、鉱業権、著作権、特許権、宝石、金地金、骨董、ゴルフ会員権などの資産を売却して得た利益のことを指します。

◇譲渡所得税は2種類

さまざまな譲渡所得の中でも、特に不動産と株式に関わるものには、他の所得と合算せずに単体で所得税を計算する「分離課税」が適用されます。さらに不動産に関わる譲渡所得は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つに分けられ、それぞれかかる税率が異なります。

短期譲渡所得

譲渡した年の1月1日時点で、5年以下しか所有していない不動産を売却したときの利益をさします。かかる税率は長期譲渡所得よりも高い、所得税30.63%・住民税9%を合わせた39.63%です。

長期譲渡所得

譲渡した年の1月1日時点で、5年を超えて所有する不動産を売却したときの利益をさします。かかる税率は短期譲渡所得よりも低い、所得税15.315%・住民税5%を合わせた20.315%です。

以上のように、短期譲渡所得の税率は、長期譲渡所得のほとんど倍近くに設定されています。節税を狙うなら、不動産の所有期間に注意し、長期譲渡所得としての売却を狙うとよいでしょう。

譲渡所得税を支払わないとどうなる?

譲渡所得税

画像出典:フォトAC

不動産を売却して得た利益は譲渡所得となり、所有期間に応じた税率の税金が課されます。そのため、不動産を売却して利益を得た場合は、翌年の2月16日から3月15日に、確定申告をしなければなりません。

◇税務署からお尋ねがくる

不動産を売却し、対象期間中に確定申告をしなかった場合、税務署から4月ごろにお尋ねが届きます。

お尋ねとは、納税状況が適切かどうかを判断するための確認書であり、不動産売却においては、売却した不動産の情報や購入代金、譲渡価格が問われます。不動産売却の譲渡所得税を忘れている、または故意に避けていると疑われ、税務署から内情を問われている状態、と考えると分かりやすいでしょう。

そもそも税務署は、不動産売却時の名義変更(所有権移転登記)から、誰が不動産を売却したのかを把握しており、確定申告や納税をあらかじめ予測しています。そのため、不動産売却後に確定申告をしないと、高確率でお尋ねが送られてくることになるのです。

◇放置すると無申告者扱いに

税務署からのお尋ねに法的な拘束力はなく、答えなかったからといってすぐに罰則や罰金が発生するわけではありません。しかし、放置すると、確定申告をしていない「無申告者」として扱われ、任意調査や強制調査の対象となるのはもちろん、控除を受ける権利を失います。

控除とは、一定額を差し引いて税金を軽減する制度であり、不動産の譲渡所得については、3000万円を差し引くものもあります。損をしないためにも、お尋ねには早急かつ正確に回答するのがいいでしょう。

なお、お尋ねに回答した結果、確定申告が必要と判断された場合は、正式期限を過ぎてからの確定申告として「期限後申告」を行います。期限後申告には、無申告課税と延滞税が課される場合があるので、こちらもできる限り早急な対応がおすすめです。

◇故意に申告しないと刑罰の対象になる

お尋ねの無視も含め、故意に譲渡所得を申告しなかった場合は、逋脱犯(ほだつはん)となり刑事罰の対象です。逋脱とは、不正に納税の義務を逃れることであり、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます。

譲渡所得が発生した場合の手順や計算方法!

不動産売却の譲渡所得について、計算方法や確定申告の手順を解説します。

◇計算方法

不動産売却の譲渡所得は、譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除の計算式で算出できます。

計算式内のそれぞれの項目内容、算出方法は以下の通りです。

譲渡価額

対象の不動産を売却した金額です。年の途中で売却し、固定資産税や都市計画税の一部を買い手に負担してもらった場合、その金額もここに含まれます。

取得費

対象の不動産を購入したときにかかった金額から、年月の経過による価値の下落分として「減価償却費相当額」を差し引いて算出します。不動産を購入したときにかかった金額には、購入代金以外にも、仲介手数料や登録免許税、不動産取得税、印紙税、リフォーム費用、造成費用などが含まれます。

譲渡費用

対象の不動産を売却するときにかかった金額です。不動産会社への仲介手数料、売り手が負担した印紙代、登記費用、測量費用、建物の取り壊し費用などが含まれます。

特別控除

利用できる控除がある場合は、それを差し引けます。

譲渡所得がマイナスになるときは、基本的に確定申告は必要ありません。ただし、特別控除を利用する場合は、譲渡所得のプラス・マイナスに関係なく、確定申告を要する可能性があります。また、確定申告が必要なくとも、それを証明できるよう、関連書類は残しておきましょう。

◇確定申告の手順

不動産の譲渡所得は、以下の手順で確定申告を行います。

必要書類の用意

譲渡所得の内訳書・確定申告書第三表の記入に必要な、不動産の売買契約書や関連する領収書を揃えます。

譲渡所得の内訳書の記入

2面に売却した不動産について、3面に売却に関わる金額について記入します。

確定申告書第三表の記入

譲渡所得の内訳書3面に記入した収入金額や所得金額、分離課税の対象となった税額などを、確定申告書第三表に転記します。

管轄の税務署への提出

完成した確定申告書は、e-taxでのオンライン提出や郵送、窓口での手渡しで管轄の税務署へ提出できます。例えば、東京都品川区に住んでいる場合の提出先は、品川または荏原税務署、東京都大田区に住んでいる場合の提出先は、大森・雪谷・蒲田税務署のいずれかです。

確定申告によって特別控除が受けられる!

不動産売却において一定の条件を満たしていれば、確定申告によって特別控除が受けられる可能性があります。

◇3000万円の特別控除

居住していたマイホームを売却した場合、3000万円の控除が受けられます。引っ越し済みならその後3年目の年末まで、建物を解体済みならその後1年間、かつ土地を賃貸に回していないこと、などの要件があります。また、買い手が配偶者や親族、同族会社などの関係者の場合は、適用されません。

◇所有期間が10年以上なら税率軽減

さらに、マイホームを10年以上所有していた場合、税率が軽減されます。長期譲渡所得の税率はもともと20.315%ですが、10年以上所有したマイホームの売却時は、6000万円以下のみ14.21%しかかかりません。例えば、譲渡所得が7000万円の場合、6000万円×14.21%+1000万円×20.315%が課されることになります。


不動産を売却する際に重要となるのが譲渡所得です。譲渡所得とは、不動産や株式、著作権などの資産を売却して得た利益を指し、その利益に対して譲渡所得税が課されます。

不動産に関しては、5年以下の短期所有の場合は39.63%、5年超の長期所有の場合は20.315%の税率が適用されます。譲渡所得が発生した場合、翌年に確定申告を行わなければならず、もし申告を怠ると、税務署からお尋ねが届き、対応を求められる可能性があるのです。さらに、無申告が続くと、控除の権利を失うだけでなく、最終的には刑罰の対象となる可能性もあります。

譲渡所得の計算は、売却価格から取得費や譲渡費用、特別控除を差し引いて算出します。確定申告の際には、売買契約書や関連書類を揃え、必要な手続きを正確に行わなければなりません。

確定申告することで、居住していたマイホームの売却に対しては3000万円まで控除が適用される場合があり、10年以上所有していた場合は税率が軽減される制度もあります。